ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」全曲 1952
2006年 10月 11日
1952.6.10-22
キングスウェイ・ホールでのセッション録音
東芝EMI CC30-3352/55
演奏は賛否両論だが、やはり避けては通れないものである。
BPOの元ティンパニー奏者 Werner Tharichenは、語っている。
「トリスタンの前奏曲のとき、チェロが六度で始まる。多くの指揮者は皆が一緒に演奏できるようにアウフタクトがあって、アインザッツのアウフタクトに慣れているところを、(フルトヴェングラーは)非常にゆっくりと手を振り下ろしただけだった。それでアインザッツできる者などいない。しかし、それは彼がほしかった無からで、無がすでに音を意味していた。無から音への移行がきめ細やかなニュアンスでそれによって演奏できる雰囲気が醸し出された。」
ここでは、オーケストラが手兵ではないので、手兵の時程の深さはないが、それでも、フルトヴェングラー流の、「無の語り」、深遠な「無からの生成」が成されている。
1年前に当時の掲示板に、CDはどれが良いか、との問いがあったのだが、同演異盤、未聴CDが多く返答不可だった。最近、当初出CDを入手し、比較できるようになった。
同演異盤CD
1.東芝EMI CC30-3352/55 (86.2)
全体にステレオ的な音質で、ふくよかな音。
2.東芝EMI CE25-5821/24 (89.7)
1と同じ?1のようなふくよかさはないと感じる。
3.東芝EMI TOCE 8448/51 (94.8)
4.東芝EMI TOCE 3760/63 「永遠のフルトヴェングラー」集
HS-2088リマスター。音の洪水的なリマスターで、デリカシーがない。
5.EMIヒストリカル 5 85873 2 ARTリマスター
ノイズリダクションが強く高域はキンキンし低域は漂白化している。
6.NAXOS
低域重視の暗めの音で、リマスター担当のオバート・ソーンの音という感じ。
7.MYTHOS
光彩ある鮮明さ。が、化粧しすぎているようだ。
ということで、再発を繰り返すごとに、音の豊かさとふくよかさが失われている。
1or2で聴くべきであろう。