クレンペラー&ウィーン・フィル BOXシリーズ レビュー6
2005年 08月 10日
MONO
1958.6.15
(S)Wilma Lipp
(Baritone) Eberhard Wachter
ウィーン楽友協会合唱団
9:27 13:12 8:47 5:19 6:14 10:12 10:42
MONOとは言え、広がりと奥行きあり、良好。
コーラスはソプラノ、アルトはまとまりがあり、良いのだが、テノールとバスは人数が少ないのだろうか。特定の個人の声が時に目立ち、ハーモニーにむらがある。
オーケストラの「歌心」は、やはりVPOならでは。POスタジオ録音よりも良い。
(フィルハーモニー合唱団の英語訛りのドイツ語でないのも利点)
Ⅰ.Vn、Vcのソフトな歌。この時期のクレンペラーにしてはよく歌う。
ハープが出る部分は、テンポが速くなる。
コーラス各パートは良いが、全体としてのハーモニーが不安定で、美しさに欠ける。
オーケストラが割りと深い呼吸で演奏しているのに、コーラスのフレーズが浅い。
結部のアルト、ソプラノが絶叫気味なのも、美しさを減じている。
Ⅱ.A主題(葬送行進曲)、オーケストラのフレーズは鳴り切らず、8割方の印象。
2回目のクレッシェンドで、トロンボーンがダーダーと強奏していく。
コーラスは「歌」というより「語り」である。
B主題、スタッカート気味に歌詞を置いていくので、レガートな流れはない。
C主題、猛然と速いテンポで疾駆する。テノールが出るとテンポが戻る。
金管群を自主性に任せて吹かせているのだろうか。気持ちよいが、バランス悪く耳障りになる。
Ⅲ.バリトンの声はすばらしい。
フーガ、テンポは速い。歌詞を「語る」ので明瞭。リズミカル。迫力はあるが、優美ではない。
Ⅳ.一転、こちらは優美な流れ。Vnの清純な音色は麗しい。Vnの最高音の1音のヴィブラートも、ハッとさせられる。コーラスも潤いが出て、充実。弱音部の繊細な情感は良い。
Ⅴ.Lippの声の伸びは麗しい(オペラチックに聴こえる方もおられるだろう)。
Ⅵ.テンポは速い。コーラスはやはり「歌」よりは「語り」。バリトンは充実した響き。
“Denn es wird die Posaune schallen”
からは強烈なアクセント(シンコペーションを強調している?)。
フーガ、アルト、ソプラノは良いのだが、テノールが聴こえない。強音部で女声陣に比べて男声陣が弱い。それでも圧倒的な構築で感動的。
Ⅶ.“Selig”と大きな音量で出る。迫力はあるが、美しさもほしい。クレンペラーならではの大味さで、繊細さや静謐さに不足するが、コーラスの厚みはある(テノールも健闘)。